これから溶接を始めたい方にとってどの溶接機をチョイスすべきか悩むと思います。
いろいろな溶接機が出ているなか、EENOUR社が取り扱っている半自動溶接機「MIG120L」は価格がとてもリーズナブルだけど本当に溶接ができるのかなど気になっている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ちゃんと溶接ができるのか、実際に溶接で使ってみてどうなのかを今回は実機を用いてレビューさせていただこうと思います。MIG120Lを気になっている方はぜひ参考にしてみてください!
MIG120Lの概要と特徴
溶接を試す前にまずはMIG120Lの基本スペックなどについてご紹介させていただきます。
基本スペックの紹介
こちらでは基本的なスペックを表にしてご紹介させていただきます。
溶接タイプ | 半自動溶接・手棒溶接・TIG溶接(LIFT TIG) |
---|---|
本体サイズ | L325xW155xH180mm |
本体重量 | 約3.4kg |
定格入力 | 3.1kVA |
入力電圧 | 100V±15% |
電流調整範囲 | 30A-120A(ノンガスMIG/MMA)、20A-120A(LIFT TIG) |
定格使用率 | 40% |
適用ワイヤー径 | Φ0.8/Φ1.0 |
適用溶接棒 | Φ1.6~Φ3.2 |
適用板厚 | 0.8mm~5mm |
MIG120Lの特徴
多機能な溶接モードを搭載!
MIG120Lの最大の特徴はなんといってもこれではないでしょうか!
半自動溶接をはじめ、手棒溶接・TIG溶接などができるので求めているランニングコスト、仕上がりに合わせて溶接を選ぶことが可能です。
溶接電流を設定するだけで自動で溶接電圧を設定してくれる
溶接をするとき、溶接電流と溶接電圧の設定が通常必要になり溶接電流の値に対し溶接電圧がどの設定値がいいのか最初はわからずなかなか設定がうまくいかないこともしばしば、、、
MIG120Lでは溶接電流を設定するだけで溶接電圧を自動的に設定されるので板厚に合わせて取扱説明書に記載されている目安の溶接電流を設定すればラクラク溶接ができます。
取扱説明書に記載されている溶接設定値の目安 | |||
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板厚 | ワイヤ径 | 電流 | 電圧 |
0.8mm | φ0.8 | 40A | 約12.5V |
1.2mm | φ0.8/φ1.0 | 55A | 約13.6V |
1.5mm | φ0.8/φ1.0 | 70A | 約14.5V |
2.0mm | φ0.8/φ1.0 | 80A | 約15.2V |
2.5mm | φ0.8/φ1.0 | 85A | 約15.6V |
3.0mm | φ0.8/φ1.0 | 90A | 約15.9V |
4.0mm | φ0.8/φ1.0 | 100A | 約16.5V |
5.0mm | φ1.0 | 120A | 約17.9V |
持ち運びができる小型・軽量
これだけの機能が搭載されても片手で持てるほどの大きさ・重さになっております。
簡単に持ち運びできていろいろな場所で溶接ができます。
開封レビュー | MIG120Lの第一印象
ここからは実際にMIG120Lを開封して気づいた点などを紹介していきます。
まず梱包箱はこんな感じの梱包箱になっています。
外観の説明
では、本体の外観をまずは紹介していきます。
全体のデザイン
溶接機が小型なのでトーチコード・アースコードが大きく見えますが、トーチのサイズなども持ちやすく使いやすいサイズとなっております。
本体フロントパネル
フロントパネルについての説明をします。表示パネルは「電圧表示パネル」と「電流表示パネル」の2つがあります。
溶接モードを選択する「溶接モード切替ボタン」や電流や電圧、溶接状態を調整できる3つのダイヤルで構成されており、初心者にもわかりやすいデザインとなっています。
外観写真
サイドパネル
天面
付属品の内容
MIG120Lには豊富な付属品が付いているのが魅力のひとつ。
溶接ワイヤーや溶接用チップが付いているのですぐに溶接が始められるのも特徴のひとつです。
では、どのような付属品が付いているのかリストにしてみました。
- 半自動溶接用トーチコード
- アースコード
- 半自動溶接用トーチ用ノズル×2
- 半自動溶接用トーチ用チップ×2
- 溶接ホルダ付コード
- フラックス入りワイヤ(0.8φ×1kg)
- ワイヤブラシ
- 取扱説明書
TIG溶接用のトーチは付属していないので別途ご購入が必要です。
MIG120Lのセットアップ手順
ここからは溶接を行うためのセットアップの手順を説明していきます。なお、今回はメインである半自動溶接のセットアップの説明をしていきます。
初心者でも簡単!組み立てガイド
周りに燃えやすいものがないか、作業しやすいかなどを確認してください。
まずは、MIG120Lを梱包箱から取り出します。
精密機械なので落としたりしないように気をつけましょう。
本体フロント部に半自動溶接用トーチとアースコードを取り付けてください。半自動溶接用トーチは3箇所取り付ける箇所があります。アースコードは「+」側に差し込んでください。※「-」側ではないのでご注意ください。
各部の名称や繋げ方についてパネルを開けたところに書いてあるのも良いです。
溶接用ワイヤを取り付けてください。
ワイヤの太さが2種類(0.8φ/1.0φ)あるのでそのワイヤの太さにガイドローラーを合わせてください。合わせないとワイヤが上手く送り出せない恐れがあります。
このとき溶接ワイヤはバラけやすくなっていますので注意してください。
本体に取り付いている電源コードをコンセントに差し込んでください。
※溶接する電流値が高い場合はブレーカーからの接続を推奨いたします。
電源をオンにし、溶接モードがMIGモードになっているか確認し、トーチのトリガーを握って溶接ワイヤーを送り出してください。
アースクリップを溶接する作業台もしくは母材に取り付ける。
実際に溶接してみた | 使用感レビュー
では実際に普通のお家で実際に溶接ができるのか半自動溶接で試してみます。
一般の家の電源で試した溶接の性能は?
今回は一般の家で使用することを想定し、普通の家で一番使われている100V/15Aの家庭用コンセントで試してみました。
3.2mmの鉄の板を用いて「突き合わせ溶接」と「隅肉溶接」を今回は挑戦。
設定値については取扱説明書に記載している電流の値「94A」に設定していきます。電圧は電流値を設定することで自動的に設定されるのでダイヤルを中央に設定しそのままにしております。
設定電流値については本体上のパネルに設定シールが貼り付けてあるのがわかりやすくて良いです。
では、溶接を試してみます。
問題なく溶け込んでいるので十分家のコンセントでも溶接ができています。
※ブラシなどで磨くことでもっと綺麗になります。今回は溶接した状態を見せたかったのでこの状態にしております。
インダクタンス調整ダイヤルについて
電流・電圧の調整ダイヤルのほかに「インダクタンス調整ダイヤル」というのがあります。
このインダクタンス調整ダイヤルは簡単に説明すると電流の変化を抑えたり、速くしたりする調整ダイヤルとなります。主にアークの特性を変更するときに使用するようです。
つまりこのダイヤルで溶け込みの深さやブローホールの調整ができるのです。
環境・条件によって溶け込みなど変わってきてしまうのでこのダイヤルで仕上がりを調整できるのも良いです。
ソフト側・ハード側の特性について取扱説明書を基に表にまとめてみました。
インダクタンス調整 | |
---|---|
ソフト側 | ハード側 |
低速溶接 | 高速溶接 |
アーク力が低い | アーク力が高い |
大粒スパッタが少々発生 | 小粒スパッタが多い |
ブローホールが少ない | ブローホールがやや多い |
溶け込み深さは浅い傾向 | 溶け込み深さは深い傾向 |
スラグ付着しやすい | スラグ剥離しやすい |
実際にインダクタンス調整ダイヤルをソフト・ハード側にそれぞれ調整し試してみました。
溶接の長さが短いためそこまで大きな違いは感じられませんでしたが確かに若干の違いは見れたので実践的な溶接を行う際は環境・電流・電圧を設定したうえでインダクタンス調整で微調整を行うと満足いく溶接の仕上がりになると思います。
MIG120Lのおすすめユーザー層
では、どのような人にMIG120Lがおすすめとなるのか解説していきます。
個人的な見解ですが、MIG120Lは「これから溶接を始めたい方」から「ある程度溶接に慣れた中級者」におすすめできます。その中でもこれから溶接を始めたい方にとっては特におすすめの溶接機です。
先述したとおり、MIG120Lの大きな特徴としては3種類の溶接モードがあります。
これから溶接を始めるにあたりTIG溶接はハードルが高いものの半自動溶接・手棒溶接どちらにしようか悩まれている場合、この機種は両方ついているので悩む必要がなくなります。
電流値の設定で電圧が自動設定してくれたり最初にワイヤがついているのもこれから溶接始める人にとっては魅力ですね。
また、慣れてきて溶接材料をステンレスでやりたい場合は、TIG溶接もできるので中級者にもおすすめとなっております。
出てきそうな質問をまとめてみた
ここからはMIG120Lでよく出てきそうな質問についてまとめてみました。
溶接の初心者でも使える?
半自動溶接・手棒溶接は使用方法をしっかり確認して環境が整っていれば初心者でも使えます。
TIG溶接はガスの準備などが必要になるので初心者が行うには少しハードルが上がります。
使用率40%は少ない?
使用率40%というのはそもそも10分間に4分間使用できて6分間休むということですが、作るものにもよりますが4分間ずっと溶接をするのはとてもハードな使い方なのでDIYベースで考えると十分な使用率です。
電源の延長はできる?
メーカー推奨は10mまでとなります。延長する際は3.5sq以上の太いコードを使用するようにしましょう。
消耗品はどのようなものがある?
MIG120Lの消耗品は次のものがございます。
溶接ノズル・チップ
ノズルとチップがセットになったアイテムです。
溶接用ノズルが2個、0.8mmチップが3個と1.0mmチップが2個含まれています。
溶接用ワイヤ
こちらはEENOURの純正溶接用ワイヤーで0.8mmとなります。次に紹介するのが1.0mmで価格はどちらも同じです。
溶接ができない
いくつか考えられることがありますが、よくあるのがアースクリップまたは溶接箇所が塗装されているため溶接ができないことが挙げられます。塗装されていると通電されないのでアースをとっている箇所や溶接する箇所は塗装を落とすようにしてください。
電流の調整をすれば電圧は何も調整せず大丈夫?
基本的には何も調整しなくても自動設定されるので溶接は可能です。電気事情や環境によってアークの状態が異なってきますのでそのときに合わせて調整することが望ましいです。
※手棒溶接とTIG溶接のモードでは電圧調整ができないので半自動溶接のみ調整が可能です。
手棒溶接はどの溶接棒でも大丈夫?
溶接棒については酸性の溶接棒をご使用ください。
アルカリ性の溶接棒ではアーク切れが発生し、安定した溶接ができません。
この溶接機を使うにあたり他にどのようなものを揃えると良い?
以下のアイテムが溶接に役立つのでおすすめです。
自動遮光溶接面
溶接機と同じメーカーEENOUR社が出している自動遮光溶接面です。
溶接中はもちろん自動遮光溶接面なので溶接前も視界が見やすく作業がしやすいのでおすすめです。
スパッタ付着防止剤
ノンガスとなるとスパッタが多いのがデメリットのひとつです。そのデメリットを解消すべくスパッタ付着防止剤を準備することをおすすめします。
このスパッタ付着防止剤を使うことで溶接時のスパッタがつきにくくなるので綺麗な仕上がりにすることができます。
保証内容とアフターサポートはどうなっている?
保証についてご購入後より1年間の保証がついております。
また、サポートでは電話やメールで問い合わせができるので繋がりにくいなどは少ないかと思います。
まとめ
MIG120Lの実機レビューをまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
初心者にはおすすめできる溶接機でこれから溶接を始めたい方など特におすすめいたします!
リーズナブルでも高機能なEENOUR社のMIG120Lは間違いなく使いやすい溶接機なのでぜひ最初の溶接機として試してみてはいかがでしょうか!