「溶接機に書いてある定格出力電流って何?」
「数字が大きいものを選べばいいの?」
溶接機の電気は性能に直接関わるものですが、具体的にどう関係するのか、知識がなければ溶接機の選定にも困ってしまいます。
DIYで溶接が行えればできる事も広がりますが、電気と溶接の関係を知らなければ作業に合わない溶接機を選んでしまう可能性や最悪全く使用ができないこともあります。
この記事では、鉄工所勤務の現役溶接工が「溶接機の定格出力電流について」や「覚えておきたい定格使用率」について解説していきます。また、併せて定格入力電流についても解説します。
DIYでもホームセンターにある溶接機であれば何でもいいわけではありませんので、自分の環境に合う、最適な溶接機を選ぶ方法を学びましょう。
定格出力電流とは?溶接機のパワー!
溶接機の銘板や取扱説明書に書いてある「定格出力電流」とは、溶接機から出せる最小から最大範囲の電流を指します。この値が大きいほど溶接機が出せるパワーが大きいということです。また、逆に「定格入力電流」というのも存在します。
「定格入力電流」は、溶接機を最大限のパワーを発揮するのに必要な電流のことを指します。例えば、溶接機の定格入力電流が30Aの場合、30Aの電力を確保できないと定格出力電流が最大まで出せないということになります。
この定格出力電流も重要でしっかりとこの定格入力電流を確保しないと溶接機が満足な能力を発揮することができません。
DIY溶接の主流として、被覆アーク溶接がありますが、電流により適切な溶接棒を選ばなければいけません。
溶接棒の太さにより、十分な強度が得られる板厚が異なるためです。
自分が溶接をしたい金属の板厚が厚くなるほど太い溶接棒、高い電流を必要とします。
具体的な溶接棒に適切な電流と板厚は以下の通りです。
溶接棒のサイズ(mm) | 適正出力電流(A) | 溶接できる板厚(mm) |
---|---|---|
1.0~1.2mm | 被覆アーク溶接に向かない | – |
1.4~1.6mm | 40~50A | 1.2~1.4mm |
2.0mm | 70A | 1.6~2.0mm |
2.6mm | 100A | 2.0~2.5mm |
3.2mm | 120A | 3~4.0mm |
また、高い電流で溶接をしたい場合には200Vなど高い電圧が必要になります。
溶接機は主に、100Vと200Vの溶接機に分けられますが、ご家庭の電気契約状況で使えるのか、考慮しなければなりません。
溶接機と家庭の電圧が適合しているか調べる
家庭用の一般的なコンセントから使える電流は15A、電圧100Vである場合が多く、200Vの溶接機では場所が限られるか使用できない可能性があります。
使用できる電気の量を超えて使用をするとブレーカーが落ちてしまうだけではなく、火災の原因にもなることから注意が必要です。
100V溶接機の特徴
100Vの溶接機では家庭用の一般的なコンセントから電源をとり、使用ができます。そこまで場所を選ばず、手軽に溶接を行うことが可能です。
しかし、出力電流が不足してしまうため、溶接板厚が厚い場合や溶接の強度を求めたい場合には向きません。
200V溶接機の特徴
200Vの溶接機は出力電流も100Vと同じ出力を出すには半分で済むので余裕を持っており、出力調整も可能なので薄めの板から本格的な厚板まで溶接ができます。
DIYでの溶接であれば強度面でも問題はなく、スムーズな溶接が可能でしょう。
経験が浅い人にも先を見据えて200Vで溶接することをおすすめしますが、作業場所で200Vのコンセントが使えるのか、確認しておくことが前提です。
作業場所に200Vが使えないが、厚い板の溶接がしたい場合には電気工事でコンセントの増設など環境の整備が必要になります。
定格出力電流は溶接機のパワーを見る目安になりますが、高い電流での溶接をしたいのなら電圧も高くする必要があります。
自分が溶接を行いたい金属、溶接を行う作業場所から適切な溶接機を選びましょう。
また、定格出力電流、電圧と同じく重要な要素として「定格使用率」を考慮する必要があります。ここからは、溶接機の定格使用率についてお伝えします。
定格入力電流とは?
ここまでは定格出力電流について解説しました。では、定格入力電流とはどのようなものでしょうか。
「定格入力電流」とはその本体が動作するのに必要な電流値となります。ドライヤーなど家庭用電気機器を動かすために電源コードをコンセントに差していると思いますが、その場合100Vが定格入力電圧でその機器ごとに必要な電流が「定格入力電流」となります。定格入力電流も単位は「A(アンペア)」となります。
定格出力電流から求められる「定格使用率」
溶接機の定格使用率とは溶接機を「10分間に何分間、連続して溶接ができるか」の目安となる数字。
定格使用率を超えて溶接を続けると機械がオーバーヒートを起こしてしまうため「機械に休憩を与える時間」と考えられるでしょう。
定格使用率は「%」で表示され、仮に30%であった場合には10分間に3分までなら連続で溶接が可能。3分以上であれば7分休憩させるということになります。そして、定格使用率は定格出力電流の最大値で考えられています。
- 定格出力電流=100A
- 定格使用率=30%
上記の場合には100Aの電流で溶接を行う時には3分溶接を続けたら7分の休憩が必要になるという考え方です。
定格使用率を超えると自動的に電源を落としてしまう機能もあるため、作業効率に大きく関わります。
DIY向けの溶接機は定格使用率が小さく設定されているものが多いためよく確認をしておくことが大切です。溶接機を選ぶ時には定格出力電流だけではなく、定格使用率も考えて選ぶことをおすすめします。
定格出力電流、定格使用率から最適な溶接機を選択する
今回は、溶接機の定格出力電流についてお伝えしました。定格出力電流とは「溶接機の出せる最小から最大の電流の範囲」を示した数字になります。
出力電流が大きいほど溶接ができる板厚の幅も広がり、強度も得やすくなるでしょう。
また、定格出力電流は溶接機で溶接できる範囲の目安となりますが、電流を大きくしたければ電圧も大きくしなければなりません。家庭の電気事情に合わせて電圧も考慮する必要があります。
- 一般的な家庭用コンセントで使える100V
- 場所が限られるか、増設する必要があるがパワーがある200V
DIYでの溶接は可能であれば200Vを選択することをおすすめします。
そして忘れずに知っておきたい定格使用率についての説明もしました。定格使用率は「10分間に連続して溶接できる時間」を示した数字です。
溶接機に記載してある電気の数字は溶接機の性能を表します。作業の効率に大きく関わるため、それぞれの意味を知り、作業にあった溶接機を選ぶことが大切です。